第42回定例会は、「プラスチックの未来とサステナビリティ」をテーマに実施しました。
3部構成で実施し、
1部では某化学メーカーで勤務経験のある研究会メンバーの藤本さんにプラスチック業界のサステナビリティに関する現況や課題、事例など、
2部ではクリーンオーシャンアンサンブルの支援チームの海老塚さんから、実際の活動における海ゴミ回収とリサイクルについて、
3部では代表の横山さんから、国際的なプラスチック規制に関するTOPIC、
を共有いただきました。
1.プラスチック業界のサステナビリティに関する取り組み
藤本さんにプラスチック業界におけるサステナビリティについてお話をいただきました。
海ゴミなど、プラスチックの負の側面がニュースなどで取り上げられることが多いですが、プラスチックは私たちの生活には無くてなならないものになっています。持続可能な環境・社会にしていくために、今後どうやってプラスチックと付き合っていくべきか、その問題提起からスタートしました。以下、要点まとめました。
■プラスチックの概要
プラッチック? プラスティック?
プラスチック(←コレが業界で定義されている正式名称です^^)
まずはプラスチックの概要について教えてもらいました。
●プラスチックとは
主に石油に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可逆性の物質で、熱硬化性樹脂と熱可逆性樹脂に大別される。
●プラスチックの製造工程
原油から石油精製、プラスチック原料、加工、製造に至るまで、複数の企業が関わり、私たちの手元にプラスチック製品が届きます。
この工程を一括でやっている会社はほぼ存在せず、各工程で分業がされている業界。

●プラスチックの原料
プラスチックのほとんどが天然資源由来の石油原料を使用。国内では、リサイクル原料由来の樹脂は約8%にとどまる。
●プラスチックの課題
便利な素材であるがゆえに私たちの生活に欠かせないものとなっている。至るところで使用されていて、それに比例するように課題も様々抱えている。
・健康への安全性
残留物質への配慮(ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、アクリルニトリルなど)
・資源の枯渇
私たちが現在の生活を続けていく想定だと、石油の可採年数は約50年。(息子が生きている間に無くなっちゃう!?えらいこっちゃ)
石油以外の代替原料の開発や利用の推進がまだまだ途上。
・環境問題
毎年800万トンの海洋ごみが流出し、2050年には海洋ごみの総量が魚の総重量を上回る!プラスチックにおいては、分解されにくことから、生態系や船舶航行、漁業など多方面への影響が、、、
●サステナビリティへの取り組み~バイオプラスチック~
日本のバイオプラスチックの出荷量は年々増加し、9年で4倍に。
※バイオプラスチックとは、植物などの再生可能な有機資源を原料とするバイオマスプラスチックと、微生物などの働きで最終的に二酸化炭素と水にまで分解する生分解性プラスチックの総称です。
●~バイオマスプラスチック~
サトウキビやトウモロコシなどから得られるエタノール等の中間原料から樹脂を合成する発酵法と、糖や油脂などの植物原料から樹脂を合成する化学合成法、の主に2つの製法で作られる。
既存の製造製品にそのまま使用しやすく、従来の化石資源と比較して短いサイクル(1~10年)で再生産ができる再生可能資源が使用されている。
●~生分解性プラスチック~
化石資源とバイオマスを原料とするもの、部分的にバイオマス由来になっているものなど。原料がバイオマスということで、合成法はバイオマスプラスチック同様に2種。
製品強度やリサイクル調和性の面でリサイクルに適さないものもある。
事例:株式会社キラックス~海洋生分解性プラスチックのレジ袋~
2.海ごみ回収とリサイクルについて(クリーンオーシャンアンサンブルの活動共有)
海老塚さんにクリーンオーシャンアンサンブルの活動についてお話いただきました。
クリーンオーシャンアンサンブル(略称クリアン)は、海洋ごみ問題解決に向けて活動するNPO法人です。海洋ごみの自動回収の仕組みづくりの構築を目指しています。活動理念に共感し、当研究会メンバーも数名参加しています。
クリアンでは、調査の一環として、香川県で毎月ビーチクリーンを実施し、海ごみの改修・分別・アップサイクルを行っています。


1月に回収した海ごみのアップサイクル率は36%。アップサイクルの引受先も増えてはきているようですが、まだまだのようで回収・分別・洗浄などのコストを考慮すると経済的には成立できないとのこと。
アップサイクル品の価値が社会的にもっと認められる必要があると同時に、ごみを出さないような生活変容を起こさないと、と気持ち新たにさせられました。
3.国際的なプラスチック規制について
横山さんに国際的なプラスチック規制の動向について共有いただきました。
バイオプラスチックといえど、食糧資源への負荷やバイオマス原料の生産時の環境負荷(肥料や農薬の増大)、分解に時間を要し海洋汚染にはつながってしまうなど、トレードオフの観点を提示いただきました。

トレードオフにある状況をトレードオンにしていくために、
・食料以外の原料の模索や、
・持続可能なバイオマス原料の生産方法の確立、
・回収とリサイクル
などの方向性を示していただきました。
また、国際的な規制の動向として、世界プラスチック条約を策定するための政府間交渉委員会(INC)の第3回会合においての、条約本文のたたき台の要点をまとめていただきました。

メンバー間で感想の共有や課題提起が行われ、盛況のうちに終えることができました。
以上、当研究会では今後も、多方面にサステナビリティ経営やSDGsの意義を普及し実践していくべく、活動してまいります。
ご支援・ご理解・ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。