第63回定例会 活動報告(2025.11.29-30サステナツアー)

 当研究会では2025年11月29日から30日にかけて、3回目となる視察ツアーを実施しました。今回の目的地はいずれも創造的な地域づくりの取り組みで有名な徳島県の神山町と上勝町です。今回は二日間にわたるツアーの様子をご報告します。

  • 一日目:神山町訪問

 朝10:30にJR徳島駅に集合した後、レンタカーに分乗して神山町を目指しました。秋晴れの抜けるような青空の中のドライブです。40分ほど車を走らせて、最初に辿り着いたのは、神山町内になる「粟カフェ」。まずは腹ごしらえです。こちらではランチのほかに注目なのが、たっぷりの神山産すだち果汁とアボカドを使った「神山美人ケーキ」です。実際に食したメンバーからは「初めて食べる味だけど美味しい!」と声があがっていました。

しっかりお腹を満たした後はいよいよ本日のメイン、神山バレーサテライトオフィスコンプレックスを訪問し、お話を伺いました。ちょうど到着した際には起業体験のイベントも行われており、周囲ののどかな雰囲気とは一変、室内は活気と熱意に溢れた空間となっていました。

 

 お話を伺ったのは認定特定非営利活動法人グリーンバレーの事務局長、作田祥介さんです。作田さんは兵庫県尼崎市のご出身ですが、大学時代から地域振興などに興味を持ち、出版社などでのご経験を経て、神山に関わられるようになられた、とのことです。

 作田さんからは、1990年代から始まった国際交流の取り組み、アーティスト・イン・レジデンス(芸術家の短期滞在事業)やワーク・イン・レジデンスなど、移住者がさらなる移住者を呼び込む広がり、そして神山を全国的に有名にしたサテライトオフィスへと発展する動きについて、詳しくお話を伺うことができました。「意図的な戦略」と「創発的な戦略」がうまく組み合わさる中で、「創造性ある人材の誘致」と「地域内経済循環」による自律的発展が育まれている、という全国的にも稀有な地域づくりの事例が進んでいることを深く理解することができました。

 作田さんのレクチャーの後は、実際に神山の農業を次世代につなぐ「フード・ハブ・プロジェクト」から生まれた「かまパン&ストア」や、アーティスト・イン・レジデンスを機に移住されたご夫妻がスタートしたビールブルワリー(醸造所)「KAMIYAMA BEER」に立ち寄りました。

 

 かまパン&ストアでは自家培養発酵種を使ったふっくらとおいしそうなパンが並び、KAMIYAMA BEERでは神山の豊かな素材を活かした様々なスタイルのビールが目を引きます。どちらもとても魅力的で、参加者それぞれの手には、気づけばお土産が増えていました。

 神山町でのプログラムはこれにて終了し、翌日の視察に備えて山を越え、上勝町へ向かいます。夕暮れが近づき、徐々に暗さを増す林道を進む道中では、シカやウサギといった野生動物に出会う場面もありました。こうして今晩のお宿「月ヶ谷温泉 月の宿」に到着しました。夕食では、徳島県のブランド豚「阿波とん豚」や上勝産のアメゴ(アマゴ)に舌鼓を打ち、温泉で旅の疲れを癒しながら、サステナブル経営の普及や実践について語り合ううちに、秋の夜は静かに更けていきました。

  • 二日目:上勝町訪問

 上勝町では、まずキャンプ場「パンゲアフィールド」を訪れました。こちらはアウトドアのほか、上勝の様々な取組みについての紹介・視察も受け付けておられます。私たちは合同会社パンゲアCEOの野々山聡さんより、葉っぱビジネス「彩事業」および「ゼロ・ウェイスト」の取り組みについてお話を伺いました。

 「彩事業」は日本料理に添える美しい季節の葉など(つまもの)を販売するビジネスです。上勝のおばあちゃん達がパソコンやタブレットを駆使し、現在では年商2.7億円にまで成長しています。80歳を超えたおばあちゃんの年収の額を伺い、参加者一同からは驚きの声があがりました。

 一方で、上勝町は長年ゴミ処理の大きな問題を抱えていました。その課題解決のため2003年には、2020年までに焼却ゴミと埋め立てゴミを無くす最善の努力をする「ゼロ・ウェイスト」を宣言されました。2020年までに「ゼロ」を達成することはできませんでしたが、今は2030年に向けた新たな宣言を掲げながら、住民自らゴミを55分別したり、賛同する企業とリサイクル容易な商品開発の実証実験を行うなど、先進的な取り組みを進めておられます。

 「彩事業」は元々、町の主力の農業であったミカン栽培が冷害で壊滅的な被害を受けたことがきっかけ、「ゼロ・ウェイスト」も野焼きや焼却炉のダイオキシン問題で町のゴミ処理が持続可能でない現実に直面したことがきっかけです。窮地に立たされる中、事象の本質を見つめるクリティカル・シンキングで対処する人材がいたことが重要であった、と野々山さんはお話を締めくくられました。

 レクチャーの後には、実際に住民の方がゴミを持ち込み分別するゼロ・ウェイストの拠点「ゼロ・ウェイストセンター」を案内いただきました。行き届いた処理・分別により、施設内には嫌な臭いは全くありません。山の緑に調和した建物のデザインや、再利用された窓枠を活かしたユニークな意匠がとても印象的でした。

 

 とても充実した内容で、3時間のレクチャーもあっという間でした。さて視察ツアーもいよいよ終盤です。二日目のランチには、上勝町を五感で感じられる「カフェ・ポールスター」に伺いました。こちらの盛り付けにも、もちろん「彩事業」の紅葉が使われていました。

 そして最後は上勝産の野菜や特産品が並ぶ産直市「いっきゅう茶屋」にてお土産を購入し、全てのプログラムを終了。帰路についたのでした。

 

 今回の視察ツアーの内容については来年2月の例会にてあらためて振り返り、学びを深める予定です。その際には、本レポートでお伝えしきれなかった気づきも併せてご紹介しますので、どうぞ楽しみにお待ちください。

コメントを残す