第59回定例会 活動報告(2025.7.17)

2025年7月17日、サステナブル経営/SDGs研究会の7月例会が開催されました。 今回のスピーカーである株式会社ジリリータジャパンの鹿島清人さんより「中小企業にSDGsは必要か?」というテーマで、中小企業におけるSDGsとサステナビリティの重要性について学ぶことができました。

1.なぜ今、中小企業にSDGsが求められるのか?

鹿島さんは、SDGsはもはや大企業だけの課題ではないと強調します。その背景には、世界と日本の大きな変化があります。

  • 世界的な潮流: 2015年に国連でSDGsが採択され、同年のCOP21でパリ協定が結ばれて以降、サステナブル(持続可能)な経営は世界標準となりつつあります。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告では、人間活動が地球温暖化の主な原因であることは「疑う余地がない」と断定されており、グローバルな課題解決は待ったなしの状況です。
  • 日本国内の動向: 2020年10月、当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことは、日本の産業界にとって大きな転換点となりました。 さらに、2023年3月期からは上場企業に対して、有価証券報告書でサステナビリティ情報の開示が義務付けられました。 これには、人材育成方針や女性管理職比率、男女間賃金格差といった人的資本に関する情報も含まれます。
  • サプライチェーン全体での要請: 大企業がサステナビリティ目標を達成するためには、取引先である中小企業の協力が不可欠です。すでに多くの企業が、サプライヤーに対してSBT(科学的根拠に基づく目標)の認定取得を要請し始めています。 これは、中小企業にとって新たな取引基準となりつつあります。

鹿島さんは、こうした動向を踏まえ、中小企業がサステナブル経営に取り組むべき理由を3つ挙げました。

  1. 収益増加の可能性: 省エネや再生可能エネルギーの導入といったカーボンニュートラルへの取り組みは、コスト削減だけでなく、新たなビジネスチャンスを生み、収益を増加させる可能性があります。
  2. 採用、特にZ世代への訴求: サステナビリティへの取り組みは、企業の社会的責任に対する姿勢を示すものであり、特に環境や社会問題への意識が高いZ世代の採用において、今や必須要件となっています。

事業承継と人材育成: SDGsという普遍的な目標は、後継者が中心となって推進しやすいテーマです。 新しい視点で会社の未来を描き、社員を巻き込みながら取り組むことで、事業承継や次世代リーダーの育成にも繋がります。

2.脱炭素経営への第一歩:知る、測る、減らす

 では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。まず喫緊の課題である脱炭素経営について、鹿島さんは「知る」「測る」「減らす」の3ステップを提案しました。

  1. 知る: まずは自社や取引先が置かれている状況を理解することから始めます。
  2. 測る: 次に、自社のCO2排出量を把握します。日本商工会議所などが提供する無料の「CO2チェックシート」を使えば、電力使用量などを入力するだけで、CO2排出量をグラフなどで可視化できます。
  3. 減らす: 排出源を特定したら、具体的な削減対策を検討し、計画的に実行していきます。

重要なのは、現状の延長線上で考えるのではなく、「バックキャスティング」で思考すること。 つまり、まず自社のありたい未来の姿を描き、そこから逆算して今何をすべきかを考えるアプローチです。

3.脱炭素を第一歩としてサステナブル経営へ

サステナブル経営は脱炭素に限らず、環境・社会へのポジティブなインパクトを与えることを目的として行われるものです。そしてそれは、従業員や消費者のマインドにも刺さるものです。

セミナーでは、脱炭素経営に向けたはじめの一歩や後継者育成の観点で、下記のようなアクションプランが示されました。

  • 自社のCO2排出量を把握するための無料ツールの活用。
  • 後継者育成の一環として、サステナブル経営に関するプロジェクトを任せてみる。
  • 公的支援策を確認し、活用を検討する。
    • ひょうご産業SDGs認証事業: スタンダード、アドバンスト、ゴールドの3区分で認証を行い、認証企業は低利融資などの支援を受けられる。
    • GX診断補助金: SDGs推進宣言企業を対象に、省エネ診断の費用の一部が補助される。

神戸市の支援: カーボンニュートラルに関するセミナー開催やCO2排出量の見える化、SBT認定取得のサポートなどを実施。

まとめ

今回の例会を通じて、SDGsは遠い目標やコストではなく、中小企業の未来を切り拓くための「投資」であり、新たな成長機会であることが明確になりました。採用、事業承継、収益向上といった経営課題の解決の糸口は、SDGsへの取り組みの中にあるのかもしれません。

まずは自社の現状を知り、未来を描くことから始めることが重要と感じました。小さな一歩が、100年後も社会に必要とされる企業への道に繋がっていくはずです。

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