第31回定例会 活動報告(2023.3.17)

 第31回定例会も外部講師を招いて開催いたしました。講師は、産業技術総合研究所で安全科学研究部門に所属されている歌川 学さまです。
 歌川さんは幅広で奥深な知見を有されていますが、それを中小の事業者に活用してほしいと、篤い志をお持ちの方でした。とてもやさしくお話いただきましたが、歌川さんの深部にこもっている熱を感じた講演となりました。
 参加者も深い学びを得て、明日からの活動のモチベーションアップにつながりました。

1. 中小企業の脱炭素と地域発展 知見の共有①

 講演は、脱炭素にまつわるマクロ視点でのお話とそれを裏付けるデータについてお話しいただく前半戦と、事業者さんに脱炭素を取組みを推進してもらうためのデータの活用方法についてご指南いただく後半戦の2部制で行われました。

脱炭素にまつわる世界の潮流
・保守的と思われたIEAが、技術的にCO2排出ゼロの道筋を示し、脱炭素への流れが加速している。
・ただ、現況としてその道筋通りに進んでおらず、世界のCO2排出量は増加傾向
・一方で、ヨーロッパでは、この30年間で4割近いCO2排出削減を実現している国がある。(イギリス、デンマーク、ドイツなど)

市場の変化
・この流れを受け、企業の脱炭素の目標も拡大しており、どのようなエネルギーを使い、どういう排出を製造過程で出したかが、詳しく問われるようになっている。
・サプライチェーン全体での排出ゼロ目標を掲げるグローバル企業も増え、中小企業においても取引先を経て脱炭素を要請される事例が増えつつある。

世界の再生可能エネルギーについて
・発電量に占める再エネ割合は日本は20.4%程度でアメリカと同程度で、世界平均の27.9%を下回る現状。
・一例として、ノルウェーは98.9%、イギリスは39.3%、中国は28.7%。
・世界の再エネの発電コストは低下しており、火力発電コストの1/3程度。
・日本では、たびたび電力逼迫のニュースなどが出ることがあるが、最上限需要の上位100万kWが逼迫する時間は年間でたったの5時間(2021年度の関西電力需要から)

日本の政策について
・環境省では脱炭素先行地域をもうけるなどの自治体支援を行い、国交省でも省エネ住宅・建築の断熱基準の義務化などに取り組んでいる。
・東日本大震災における原発事故以降、省エネ化は進展している。
・しかしながら、エネルギーの2/3は無駄にロスされている現実がある。⇒大きなチャンス!
・実際、日本の再エネの可能性として、現状の電力消費量の7倍近いポテンシャルがある。
・地域の産業構造によりCO2排出の割合は大きく異なる。脱炭素を進めるにあたり、地域の状況と向きあいながら進める必要がある。
・電力や低温熱利用、中温熱利用、自動車燃料などにおいては商業化された優良技術などが普及しており、90%以上のCO2排出削減が実現可能!

前半戦を終えての感想や質問では、
・ヨーロッパとの歴然の差を目の当たりにして、衝撃を受けた。
・省エネを進めることが現実的に出来ることを感じ、実行フェーズに移るべきだが、規制などでもっと推進することが出来るのでは。
・中小の事業者にとっては、目先の事業継続が目下の課題であり、脱炭素への取組みをジブンゴト化するのは難しいのでは。
・EV車も普及しているが、今の車を長く使うのが良いか、省エネカーに乗りかえるのか、実際どちらが良いのだろうか。
といった意見が寄せられました。
ちなみに、自動車の乗り換えは早くした方が良いようです。ライフサイクルで見たCO2を考慮しても乗り換えた方が排出は少なくなるようです。

2. 中小企業の脱炭素と地域発展 知見の共有②

 後半戦は、中小の事業者さんに診断士として出来ることについて、データを用いてご指南いただきました。目からウロコのお話しでした。

省エネ・再エネの効果
・高いコストをかけて化石燃料を輸入するより、設備投資をして省エネ化をし、光熱費を削減した方が圧倒的に後の利益につながる。
・光熱費対策としての設備更新で、地域の中小企業にビジネスチャンスが生まれる。
・設備更新を「高い」と言って対策をせずにそのまま使うより、省エネ型に切り替えた方がトータルのコストは安くなる。
・配管断熱回収や照明、冷暖房など、それぞれの設備で投資回収の期間は異なるので、比較的回収が早い設備から更新をし、その恩恵を受けながら投資を進めていくのが良い。
・ファイナンスが担保されている状況が望ましく、行政の補助金も制度として整ってきている。それでも大半の対策は補助金なしでもコスト節減分で回収できるので、中小企業も省エネを積極的に推進してほしい。

気づきを与える
・業種別や施設の用途別にCO2排出量や光熱費の平均値が統計で確認できる。そのデータを持って、業界平均値などと比較し、事業者に気づきを与えることができる。
・ヨーロッパでは、公的機関が無料で省エネ診断をしてくれる事例も多い。日本でも増えてきているので、そのような外部機関もつなげて、自社の状況を見える化してあげることができる。
 ex.省エネお助け隊ポータル

 後半戦の感想、質問として、
・経費削減=CO2排出削減につながることは、中小企業が脱炭素に取り組むメリットとなり、このメリットを診断士として示していく必要を感じた。
・業種別の光熱費の平均については、診断先の事業者さんに気づきを持ってもらうのに、とても参考になった。
・脱炭素がコスト削減になるのに、周知が少ないように感じる。国策としてもっと国にもリーダーシップを発揮してほしい。
といった意見が寄せられました。

3. まとめ

 まとめとして、投影スライドの最後のページを掲示します。

 72ページにも及ぶ膨大な資料をご準備いただきました。
 大きな学びを得られることが出き、参加者一同、有意義な時間となりました。歌川さんからの学びをしっかりと実践に移し、より良い未来のために精進します。
 ありがとうございます。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。