第30回定例会は、「廣水さまリターンズ(仮)」 と題しまして、ADS株式会社代表取締役 廣水乃生(ひろみず のりお)さまをお迎えしてご講演をいただきました。
廣水さんは、(一社)サステナビリティトランスフォーメーション推進協会の代表理事も務めておられ、パタゴニアの日本支社の戦略策定に唯一の外部ファシリテーターとして携わった経験をお持ちのSXに関しての有識者でいらっしゃいます。
ご自身でも茨城県において友部コモンズという持続可能な地域づくりの市民団体の運営もされており、実践とコンサルと幅広く活動されています。日本でSXという言葉が巷で利用される以前より、その意義を唱えておられた方です。事前の予想通り、普段の例会よりもより多くの会員が参加され、盛況のうちに終わりました。

1. 講演
『SX推進によって中小企業を持続可能にする ー価格高騰の影響から事業を守るために今、中小企業に必要なトランスフォーメーション』をテーマに講演いただきました。
◆ 持続可能な社会の要件とは?
⇒生きていくために必要なものが手に入らない状況、経済合理性を追求してきたインフラが機能しなくなってきている。
・ 最重要課題は、地球環境(プラネタリーバウンダリー)と考える
プラネタリーバウンダリーとは、ヨハン・ロックストローム博士たちにより開発された概念
・一般的に問題解決とは、課題を設定してそれに対して解決策を立案することになるが、比較的部分最適になりがち、これによって新たな課題を生んでいる。具体的には、経済合理性を高めることによって環境や社会が損なわれる。など。
今後は、統合的な(すべてを網羅した)解決策を検討することが求められてる
◆ 持続できないビジネスとその連鎖
⇒現状の問題
・エネルギー高騰⇒閉業、人件費削減⇒収入激減と同時に食費高騰⇒社会が不安定に。
・見直し項目:原材料、エネルギーとその調達方法、廃棄物(再資源化の可能性)
⇒エネルギー転換コンサルティング事例紹介(クリーニング業)
サステナビリティについて学習することも重要だが、本当の意味でのインフラが地域に実装されなければ、持続可能な未来に到達できない。
自律分散型社会というワードを良く耳にするようになりましたが、地域のインフラという視点でのお話は、非常に説得力があり考えさせられるテーマでした。
2. ダイアローグ
講演の後は、廣水さんとの対話セッションです。みっちり1時間以上の時間をかけて意見交換をさせていただきました。
以下、取り留めないですが、対話の中から出てきたワードをピックアップします。
・エネルギーの高騰で一部の企業収益が大幅にアップしている事例についてどうとらえればよいか?
⇒再生エネルギーなど、生物多様性などの問題も捉えながらトレードオフにならないように取り組まなければならない。
・究極的な話ではあるが、技術や資本が地域に分散・共有されていけば、ランニングコストが実質0円の社会が作れる。
そもそも貨幣経済をベースとした資本主義経済をバランスを取りながら縮小していくことが、自律分散型社会を実現することに必要であると考える。
・バランスを取りながら自律分散を実現していくにあたって、PPAについて注目している(https://www.env.go.jp/press/press_01221.html)
⇒ドイツのシュタットベルケ構想に近い考え方で思っている。
・銀行が、融資判断にあたって企業の環境問題への対応度合いを参考にするケースが増えている?
⇒実際にサステナビリティに関する格付けが行われており、融資の判断になるケースはあるが、実際問題、前提としてビジネスの持続可能性(返済できるかどうか)が判断として大きくなる。各金融機関のスタンスにも依るが、、、
・省エネ、再エネをコスト削減で行うのか、環境負荷低減で行うのか、事業者のスタンスでも議論の方向性が変わる。
⇒現状把握しながら、バランス良く支援していく必要がある。
・循環型の経済を洞察していくと、生産→消費→廃棄という一方通行の流れで資本主義が形成されている現実があって、回収するためにコストが発生し、障壁となる事例がある。
⇒地消地産が肝要になってくる。地域で消費したものを作っていこうという考え方。地域で必要なものを作れば良いから、無駄な廃棄が無くなってくる。
・デジタル田園都市構想を国が進めているが、デジタルというインフラが資本主義経済の流れに乗っかってしまう事に少し懸念している。
⇒自律分散型社会を実現するためにはローカルが自律した地域を取り戻すために、地域自身がそのことについて意識をしておく必要がある。
現実的には、資本主義経済の中で構成されている中小企業が目先の課題を解決していかないといけない状況がある中で、我々中小企業診断士がサステナビリティを意識しながら、事業者の伴走支援を行う責任を強く感じました。
3. まとめ
今回は、講師からの一方的な講演ではなく、講師から提起いただいたテーマについて会員それぞれが、自身の知見をシェアする場面もあり、相互の知見が深まりました。
また、サステナブル経営/SDGs研究会会員外の参加者からの情報提供や意見交換もあり、白熱した議論となりました。
より良い未来につなげていくために、当研究会としても外部連携をしながら学び・実践を深めていこう、そう改めて思った例会となりました。
ありがとうございます!!
