大阪府中小企業診断協会「スキルアップ研修」実施報告(2021.1.27)

2021年1月27日、大阪府中小企業診断協会「スキルアップ研修」にて、太田(当研究会 代表)が「診断士のためのSDGs(エスディジーズ)入門」というテーマで講演を行いました。

当日は、大阪府中小企業診断協会所属の99名の診断士にご参加いただきました(申込は141名)。改めてSDGsに関する関心の高さを感じたところです。

はじめに

簡単に、筆者の自己紹介をさせていただきました。診断士試験合格、そしてSDGsとの出会いという人生の転機を経て、「SDGsとは様々な立場の方とつながることのできる“魔法の言葉”」であるという筆者の信条を紹介いたしました。

これは、SDGsというキーワードだけを頼りに、様々なセミナーや勉強会、コミュニティに飛び込んだこと、多様な立場の方と、時には生い立ちまで掘り下げた深い「対話」を通じてお互いに共通理解を得た経験等を通じて、コミュニケーション能力が高まり、積極的になれたとの思いがあるためです。

その後、当日のアジェンダをお示ししました。

今回参加いただいた診断士の方は、ほとんど知らないという方から、すでに自らコンサルタントとして実践されている方まで、SDGsへの知識・取組レベルは様々でした。

そのため、基本的なSDGsの知識をお伝えしつつも、具体的な取組事例やメタファーを使用し、診断士としてできることまで掘り下げてお話しすることを意識しました。

第1章 SDGsとは何か

まずはSDGsの基礎知識として、以下のことをお伝えしました。

  • SDGsとは「持続可能な開発目標」の略語であること。
  • 持続可能であるとは「現役世代のニーズを満たしながら、将来世代のニーズも満たす」ということ。
  • 誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会への変革を目指し、国連で採択された目標であること。
  • 17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標(インジケーター)から構成されていること。
  • 途上国支援を目的としたMDGsの後継として採択されたこと。
  • 全ての国、自治体、企業、その他団体、市民は、目標達成に向けた取組が求められること。

また、SDGsが採択されるに至った背景として、以下のような理由があることをお伝えしました。

  • 人口爆発と資源の枯渇、環境負荷の増大
  • 情報爆発による地政学リスクの増大、それに伴うVUCA※社会への突入
    ※変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、 曖昧性(Ambiguity)の頭文字をつないだもので、予測不可能な状況を表す用語

特に、日本はここ100年の間に人口が急増し、今後100年で人口が半減する課題先進国であり、既存の社会システムが通用しない中、SDGsが課題解決に向けた羅針盤となりうることをお伝えしました。

こうした中、日本においては2016年に首相官邸に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されています。また、2020年12月に 策定された「SDGsアクションプラン2021」では、コロナ禍を踏まえて新たに以下の4つの方針が示されました。

①感染症対策と次なる危機への備え
②よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
③SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
④一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速

また、2050年の脱炭素に向けた動きを背景に、新たに「グリーン成長戦略」が示されるなど、環境省のみならず経済産業省においても、環境対応を新たな成長分野ととらえ、支援していく方針である、といった足元の動きをお伝えしました。

資料出所:経済産業省「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

第2章 企業とSDGsとの関わり

まずは大企業における取組の事例として、トヨタ自動車のSDGsへの取組を例に挙げて解説しました。

トヨタ自動車は、祖業である自動織機メーカー、現在の自動車メーカーに共通する提供価値を捉えなおし、自社の使命を「幸せを量産すること」としています。

その実現に向けては、「自分以外の誰かの視点に立ち、他人の幸せを願い、行動できる人財」を育てることが重要であり、そのためにSDGsに本気で取り組むことを明言されています。

こうした大企業の取組の背景には、少なからずSDGsへの関心の高まり、とりわけESG投資(環境、社会、ガバナンスに配慮した投資)を重視する機関投資家の動きがあることをお伝えしました。

資料出所:環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書」を参考に筆者作成

また、このところ消費者もSDGsの認知度が高まっていること、特に小学生も学校で「SDGs」を学ぶ時代が到来していること、彼らが大人になるころにはSDGsの概念はもはや当たり前になっていること等をお伝えしました。

続いて、先進事例の紹介として、「ジャパンSDGsアワード」受賞先の取組から、代表的な事例をピックアップして紹介しました。

規模の大小はあれど、いずれの企業も社会課題に着目し、それを本業で解決することで新たな価値を創造していることをお伝えしました。

第3章 SDGs達成に向け、診断士としてできること

中小企業においてSDGsを推進する意義として、経営理念、ビジョン、事業戦略、戦術・実践レベルそれぞれを、社会課題の観点と結びつけて捉えなおす効果があることをお伝えしました。

資料出所:各種資料より筆者作成

特に、「7S」(組織を構成する7つの資源の相互関係に注目したフレームワーク)において、SDGsは「Shared Value」(共通の価値観)に据えることが可能であり、社内の結束力が強化され、他の要素に好影響を与えるのではという持論を述べました。

資料出所:各種資料より筆者作成

また、具体的な効果として、以下のように様々な面で効果が期待できることをお伝えしました。

特に、人財確保の観点からは、Z世代と呼ばれるような若い世代においては、就職先を選ぶ上で、当該企業が社会課題にコミットしているかどうかも、選択基準の一つとなっていること、SDGsに取り組むことが優秀な人材を引き寄せることにつながる可能性を述べました。

資料出所:環境省「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(第2版)」を参考に筆者作成

実際の取組にあたっては、以下のようなステップが考えられます。

SDGsの取組を推進するにあたっては、経営層から現場への押し付けでなく、腹落ち感、すなわち現場リーダーレベルが納得した上での自主的な行動こそが重要であることを強調しました。

SDGsをうまく活用することにより、会社が一丸となる価値協創ストーリーを描くことが可能となります。

資料出所:各種資料をもとに筆者作成

そして、診断士としてSDGsに取り組むこととは、「持続可能な企業への変革をお手伝いすること」ではないか、という持論を強調しました。

ちなみに、2025年には大阪・関西万博の開催が予定されています。

大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとしており、Society5.0とSDGsがそのコアとなっています。ありたい未来社会の実現に向けて、万博のプロジェクトに診断士として関わり、何らかの活動をすることも、SDGsの実践につながる可能性があると考えられます。

まとめ

SDGsは、2030年までに解決すべき「共通課題」であり、企業にとってのビジネスチャンスです。そして、SDGsには一見してトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)に見えるゴールが複数含まれていますが、この「一見、対立しそうな概念を両立しようとする」取組からこそ、イノベーションが生まれると考えています。

SDGsに取り組むことでブランド力・組織力・経営力が高まる効果が期待され、診断士としては、未来にありたい自分やクライアント企業の姿を思い描き、自分やクライアント企業の提供価値を考えることが重要ではないか、とお伝えして、約2時間の講演を終えました。

質疑応答

Q.具体的にどうすればSDGsの認証が受けられますか?

ーA.長野県×関東経産局モデルでは、SDGs宣言とチェックリストの2段構成となっています。お墨付きがもらえるということで、200ぐらいの企業※が登録しています。
関西では私の知る限り、まだこうした認証制度は見受けられないように思われますが、現在、内閣府で同様の認証制度の検討が進められており、まもなく公表されるのではないかと考えます。事前に関東経産局モデルを予習しておくのが望ましいのでは。
※筆者注:ブログ執筆にあたり再確認したところ、2021年1月28日現在、547先の企業が登録されていました。詳細はこちら。筆者の情報が古く申し訳ございません。

Q.SDGsとCSRを同義と考えている企業が多いような気がする。SDGsとCSRを同義と考えている層はまだ多くいるような感覚が否めない。この認識を更に一歩進めていくためのコミュニケーションやアクションって例えば何でしょうか?

ーA.一般的にCSR(企業の社会的責任)と聞いて思い浮かべられるのは、社会貢献/フィランソロピーなど、狭義のCSRと呼ばれる分野です。しかし、いわゆるCSV(共有価値創造)と呼ばれる広義のCSRに該当する分野や、狭義のコンプライアンス(ハードロー)や広義のコンプライアンス(ソフトロー、明確に法や規則に抵触しないが、倫理的に守るべき規律)など、これら全部をまとめてSDGsとして理解してもよいのではないかと考えています(注:筆者の私見です)。

Q.SDGsへの取組は、ものづくり補助金の大きな加点項目になっていないのでは?

ーA.(誠に恐れ入りますが、これは会場にご参加いただいた皆さまだけに回答を限定させてください)

Q.三方よしに関連して、アメリカの大手株式会社の経営方針が、従来の株主中心の資本主義から、ステークホルダー中心の資本主義に移行しつつあるように考えますが、いかがでしょうか。

ーA.こうした動きは、これまでのアメリカ型資本主義の限界が見えてきたためではないでしょうか。サブプライム問題に代表されるように、短期的収益の追求がもたらす弊害が明らかになったことでステークホルダー資本主義への移行が進んでいると理解しています。これはよくよく考えれば、従業員を大事にし、社会に還元する、古き良き日本の経営そのものではないでしょうか。アメリカ型の資本主義が、(時代遅れとされていた)日本型の資本主義に回帰してきた、螺旋的発展のイメージで筆者は理解しています。

Q.SDGsもきれいごとにしてしまうとISOみたいになってしまうのではと危惧しています。

ーA.おっしゃる通り、SDGsも必ずしもきれいな面だけではありません。SDGsはヨーロッパが自国に有利なようにルールメイキングをし、日本が律儀に守る(結果、国際競争上不利になる)というお決まりのパターンが展開される可能性もあります。これに対して、無視するパターンもあります。一方、第三の道として、日本が自らルールを打ち出していく道もあるのではないかと、筆者は理解しています。脱炭素についても同様に考えます。お答えにはなっていないと思いますが、ご容赦ください。

この後、ESG投資にお詳しいA様から、これまでのエコ系の取組とSDGsの決定的な違いとして、「付加価値の創造」にフォーカスしている点を挙げ、持続可能であるために、「清く正しく儲ける」ことの重要性を強調いただきました。A様、ありがとうございました。

最後に、ご参加いただいた参加者の皆さまと記念写真を撮り、スキルアップ研修を閉会しました。

ご参加いただいた皆さまと

ご参加いただいた皆さまからのご感想

開催後、皆さまからいただいたアンケートのご意見をご紹介いたします。大変多くの方からこのようにご意見を頂戴しましたこと、大変ありがたく感じております。
この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。誠にありがとうございました。

ESGとSDGsの各ゴールとの関係の木のお話がとても腑に落ちました。
経済の実り(=儲け)は、木が健康に育ってこそですよね。ありがとうございました。
SDGsについて、基本的なことから、疑問に思っていることまで幅広く知ることができました。本当にありがとうございました。
SDGsについて基本的なことが良く理解できただけでなく、太田さんや皆さんの考え方が大変参考になりました。ありがとうございます。
SDGsに関して中小企業レベルで聞く機会は今までありませんでしたので、とても良い研修でした。身近になり、取り組みやすくなる気がしました。
SDGsに関して非常に勉強になりました。今後、診断士として今回の研修を活用できるよう取り組んでいきたいと思います。
SDGsの伝承者として、銀行の人たちも含めて広めていただければと思います。
SDGsはどこへ行っても考えなくてはいけない課題。表面上だけの理解では太刀打ちできなくなるだろうという中でこういう本音も混じったセミナーは価値があると思いました。
SDGs入門として「とっかかり」になるような良い研修だったと思います。太田さんありがとうございました。
ありがとうございました!勉強になりました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
サステナブル経営・SDGs研究会の対外的な活動の参考になりますね。太田さんありがとうございました。
チャットでの意見をすぐに活用して、ライブ感のある研修で、よかった。
とてもわかりやすい説明でした。ありがとうございました。
とてもわかりやすかったです。ありがとうございました。
とても勉強になりました!早速仕事で生かしたいと思います。
最後のCSR、CSVとの相関図がわかりやすかったです。
素晴らしい内容で良かったです。時間配分も素晴らしかったです。
太田さん、大変わかりやすい説明をありがとうございました!勉強になりました。
大変勉強になりました。ブレークアウトセッションも良かったです。SDGsに関する続編を期待したいです。
知らないことも多く、大変勉強になりました。Woven Cityや中小企業の認証制度など、今の時流も知れてよかったです。講師の方の落ち着いた話し方が入ってきやすかったです。
途中からの参加となりましたが、大変参考になりました。講師の太田様のお話がとても分かりやすく、また広がりのある話題のとりあげ方、進め方も大変すばらしくとても有益な講義でした。また、A様のお話も興味深く聞かせて頂きました。運営の皆様、ありがとうございました。お疲れ様でした。
内容もさることながら太田さんのプレゼンの語り口が素晴らしかったです!
漠然としか理解していなかったことでしたが、ずいぶんクリアになりました。今後の活動に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
非常にわかりやすい内容でお話いただきました。また最後のA様のお話も実際に企業様とお話する際の大切なポイントを知ることができました。有難うございました。
非常に高い視座からのお話でとても勉強になりました
勉強になりました。SDGs認証など今後勉強しながら広げていきたいものです。ありがとうございました。
綺麗ごとの部分に留まらなかった点がとても良かったと思います。
3つの具体例を掘り下げてもらえれば、さらに良かったと思います。
時間は守って欲しいと思います ※
改めて勉強させて頂きました。
SDGsを契機に事業で儲かる仕組みを考え、将来にむけた企業でありたいですね。
太田さんありがとうございました!
資料出所:受講者アンケート結果より筆者作成


貴重なご意見、ありがとうございました。
講演自体は定刻の5分前に終了したのですが、質疑応答が大変盛り上がり、予定の時間をオーバーしてしまいましたことをお詫び申し上げます。

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